第841回 生医研セミナー(多階層生体防御システム研究拠点)
以下の通り、髙島 康弘 先生によるセミナーを開催します。皆様のご来聴を心より歓迎致します。
演題 / Title
ナイーブ型多能性幹細胞を用いたヒト初期発生メカニズムの解析
演者 / Speaker
髙島 康弘 先生 / Yasuhiro Takashima M.D.,Ph.D.
准教授
京都大学iPS 細胞研究所 未来生命科学開拓部門
日時 / Date
2024年1月17日(水) / Jan. 17 (Wed), 2024
17:00〜18:00
場所 / Venue
病院キャンパス コラボ・ステーションI 2階 視聴覚室
キャンパスマップの35番です。
要 旨 / Abstract
マウスES/iPS 細胞は着床前胚盤胞のエピブラストと同等の細胞である。一方、ヒトES/iPS 細胞は着床後エピブラストまで発生が進んだプライムド型に分類される。我々はヒト着床前エピブラストに近いナイーブ型ES/iPS 細胞を樹立することに成功した。
ナイーブ型であるマウスES/iPS 細胞とヒトナイーブ型を比較したところ、多くの遺伝子発現はナイーブ型としてよく似た遺伝子発現パターンを持っていた。一方でナイーブ型ヒトES/iPS細は、マウスES/iPS 細胞では分化しないとされる着床前胚盤胞の栄養外胚葉に分化する能力を有していた。さらに着床前胚のハイポブラストにも分化させることにも成功した。以上から我々は着床前ヒト胚盤胞を構成するエピブラスト、ハイポブラスト、栄養外胚葉の全てを誘導する系を作り出すことに成功した。
これら着床前細胞を用いて、ヒト初期発生の3 次元モデル(バイラミノイド)を作製することを試みた。興味深いことにハイポブラストは着床前エピブラストを着床後へと分化させる能力を有し、バイラミノイドには前後軸の存在とともに原始線条期の細胞が出現した。さらには栄養外胚葉・栄養膜細胞(トロホブラスト)はIL6 を分泌し、エピブラストの増殖と羊膜腔構築を助ける役割があることもモデルを用いることによって明らかにできた。
本講演では、ナイーブ型ヒトES/iPS 細胞や3次元モデル(バイラミノイド)を利用し、解析が困難なヒト発生メカニズムを解析した結果と可能性を紹介する。
連絡先 / Contact
生体防御医学研究所
高深度オミクスサイエンスセンター
トランスクリプトミクス分野
大川 恭行
092 (642) 4534