第839回 生医研セミナー(多階層生体防御システム研究拠点)

以下の通り、岩渕 真木子 先生によるセミナーを開催します。皆様のご来聴を心より歓迎致します。

演題 / Title

パイオニア転写因子とPRDMの協同作用によるエピジェネティックス・細胞運命制御機構

演者 / Speaker

岩渕 真木子 先生 / Makiko Iwafuchi, Ph.D.
Assistant Professor
Cincinnati Children’s Hospital, OH, USA.

日時 / Date

2023年11月2日(木) / Nov. 2 (Thu), 2023
17:00〜18:00

場所 / Venue

病院キャンパス 総合研究棟 1階 セミナー室105
キャンパスマップの34番です。

要 旨 / Abstract

パイオニア転写因子は、新たな細胞運命を誘導するために、局所的にクロマチン構造を開き、アクティブなエピジェネティック修飾を確立する。このパイオニア転写因子の特性を活用した細胞リプログラミングは、疾患モデリングや再生医療への貢献が期待され、大きな関心が寄せられている。しかし、アクティブな転写制御機構に対して、同等に重要である代替遺伝子の抑制機構は、いまだ未解明な部分が多く、細胞リプログラミングのボトルネックとなっている。多くのリプログラミング法は、起源となる細胞の転写プログラムを抑制する効率が悪く、リプログラミング効率の低下をもたらす。したがって、細胞分化過程において、どのように代替遺伝子の発現が抑制されているのかを理解することが重要である。本研究では、ヒト多能性幹細胞から内胚葉系への分化モデルを用いて、パイオニア因子FOXAが、PRDM1転写因子と協調して、抑制的エピジェネティック複合体(NuRD, Polycomb Repressive Complexes)をリクルートし、代替遺伝子の発現を抑制することを明らかにした。多能性幹細胞においても、同様にパイオニア因子であるOCT4とPRDM14が協調して分化プログラムを抑制していることを明らかにし、パイオニア因子とPRDM因子による共通の機能である可能性が示唆された。これらの結果を応用することで、細胞リプログラミング効率の向上が期待される。

参考文献 / References

  1. Iwafuchi-Doi M and Zaret KS.
    Pioneer Transcription Factors in Cell Reprogramming. Genes Dev., 2014.
  2. Iwafuchi M, Cuesta I, Donahue G, Takenaka N, Osipovich A, Magnuson M, Roder H, SeeHolzer S, Santisteban P, and Zaret KS.
    Gene Network Transitions in Embryos Depend Upon Interactions Between A Pioneer Transcription Factor and Core Histones. Nature Genetics, 2020.
  3. Matsui S, Granitto M, Buckley M, Shiley J, Zacharias W, Mayhew C, Lim H-W, and Iwafuchi M.
    Pioneer transcription factors coordinate active and repressive gene expression states to regulate cell fate. bioRxiv, 2022.

連絡先 / Contact

生体防御医学研究所 器官発生再生学分野
鈴木 淳史
092 (642) 6449

Division of Organogenesis and Regeneration, Medical Institute of Bioregulation
Atsushi Suzuki
TEL: 092 (642) 6449