研究所の使命
所長 大川 恭行
Director Yasuyuki Ohkawa
2025年4月8日
生体防御医学研究所は、生体の恒常性を維持するために重要な「生体防御」を研究の中心に据え、その制御機構を分子、細胞、個体のレベルで明らかにすると共に、生体防御機構の破綻による疾患の克服を目指した研究を展開しています。これまでにも、生命現象の本質や疾患発症のメカニズムに迫る多くの優れた成果を発信し、国際的にも高い評価を受けて参りました。さらに現在、バイオロジーとテクノロジーの連携をより一層強化することで、多角的に生体防御システムを解明できる世界的な研究教育拠点を目指して活動しています。
本研究所は、1982年4月に九州大学温泉治療学研究所(大分県別府市)と医学部附属癌研究施設(病院地区)の統合・改組により発足しました。2001年4月には、遺伝情報実験施設の統合による大幅な再編を実施し、3研究部門および2附属施設、計20分野の体制を確立しました。その後、2022年4月にシステム免疫学統合研究センターと高深度オミクスサイエンスセンターを新設し、先端医学生物学研究の基盤をさらに強固なものとしました。さらに、2025年4月より、国際連携部門および令和7年度概算要求事業の採択に伴う学際生命科学部門を創設し、グローバルな視点での研究推進と新たな分野創生に挑戦していきます。
また、本研究所では、最先端の研究機器や支援技術(単一細胞プロファイリング、空間オミクス、クライオ電顕、ゲノム編集など)を国内外の研究者に提供し、先進的な実験環境を整備しています。共同利用・共同研究拠点として、有力な国内外の研究機関と連携し、感染症、がん、アレルギー等の疾患発症メカニズムの解明に向けた高精度なビッグデータの収集・解析を進めています。
大学院教育においては、医科学専攻修士課程、医学専攻博士課程およびシステム生命科学府の5年一貫制博士課程において、最先端の研究指導と学際連携を実現し、次世代の研究者育成に努めています。加えて、共同実験施設は、研究推進ユニットとして再編され、情報解析基盤室や先端研究開発室の設置により、ビッグデータ解析、情報セキュリティ対策、若手研究者の独立支援など、時代の要請に応じた体制を整えています。
2025年度では、国際的な研究力強化を見据え、43年ぶりに新たな部門が発足します。国際連携部門では、海外の交流協定先から有力な教授が客員教授として赴任し、外部アドバイザリーとして研究活動に参画します。一方、学際生命科学部門では、国際的に通用する研究代表者(PI)のリクルートと、独立准教授の育成を中長期的に推進するテニュアトラックシステムを導入し、新たな研究分野の創生を目指します。
以上、本研究所は新たな組織体制と先端技術、国際的な連携基盤をもって、生体防御機構の解明と疾患克服に向けた挑戦を継続して参ります。今後とも、教員・学生・スタッフ一同、革新的な研究成果を通じた医療イノベーションの実現に全力を尽くしていく所存です。何卒、ご支援賜りますようお願い申し上げます。