研究所の使命

所長

所長 福井 宣規
Director Yoshinori Fukui

2022年4月1日


生体防御医学研究所は、生体の恒常性を維持するために重要な「生体防御」を研究の中心に据え、その制御機構を分子、細胞、個体のレベルで明らかにすると共に、生体防御機構の破綻による疾患の克服を目指した研究を展開しています。研究所はこれまでにも、生命現象の本質や疾患発症のメカニズムに迫る多くの優れた成果を発信し、国際的にも高い評価を受けて参りました。さらに現在、バイオロジーとテクノロジーの連携をより一層強化することで、多角的に生体防御システムを解明できる世界的な研究教育拠点を目指して活動しています。

本研究所は、1982年4月に九州大学温泉治療学研究所(大分県別府市)と医学部附属癌研究施設(病院地区)の統合、改組により発足しました。2001年4月には、遺伝情報実験施設を統合して大幅な再編を行い、3研究部門(ゲノム機能制御学部門、細胞機能制御学部門、個体機能制御学部門:計12分野)、2附属施設(遺伝情報実験センター、感染防御研究センター:計8分野)の構成となりました。その後、2009年4月に感染ネットワーク研究センターを設置し、2010年4月に感染防御研究センターを生体多階層システム研究センターに改組しました。本研究所は、2010年度に文部科学省から共同利用・共同研究拠点「多階層生体防御システム研究拠点」として認定され、生体防御に関連する研究を行っている国内外の多くの研究者と共同研究を推進してきました。2011年4月には別府地区の病院と臨床3分野を九州大学病院へ移管し、さらに先端研究に集中する体制を整えました。

2013年4月には、「遺伝情報実験センター」の改組により「トランスオミクス医学研究センター」を設置し、多階層オミクス解析技術の開発を推進してきましたが、その実績を基に、2022年に「高深度オミクスサイエンスセンター」を創設する予定です。このセンターでは、国内の3つの共同利用・共同研究拠点(東京医科歯科大学難治疾患研究所「難治疾患共同研究拠点」、徳島大学先端酵素学研究所「酵素学研究拠点」、熊本大学発生医学研究所「発生医学の共同研究拠点」)と連携して、社会的ニーズの高い感染症、アレルギー、がん等の疾患発症のメカニズム解明に向けて、時間軸や空間軸に沿って、高精度・高分解能のビックデータを収集・統合し、得られるデータを標準化・モデル化につなげて恒常的に世界へ発信します。このため、高深度オミクスサイエンスセンターに所属する教授4名を今年度新たに公募します。加えて本研究所は、2022年4月から、第3期の共同利用・共同研究拠点「多階層生体防御システム研究拠点」の認定更新を受けており、最先端の研究機器や支援技術(超高速DNAシーケンサー、電子顕微鏡、NMR構造解析、プロテオーム・メタボローム解析、遺伝子改変動物作製サービスなど)を国内外の多くの共同研究者に開放・提供します。

2018年4月には、附属施設の「生体多階層システム研究センター」と「感染ネットワーク研究センター」を統合再編して、「システム免疫学統合研究センター」を新設し、その下に客員の分野を含め5つの分野を設置しました。また、研究部門を分子機能制御学部門、細胞機能制御学部門、個体機能制御学部門の3部門に、また発生工学実験室と技術室を研究推進ユニットに再編しました。今年度、研究部門に所属する教授2名を今年度新たに公募します。一方、大学院教育においては、医学系学府(医科学専攻修士課程、医学専攻博士課程)とシステム生命科学府(生命医科学専攻 5年一貫制博士課程)の教育と研究指導を担当し、理医連携のコアとして活動しています。

この様に、本研究所は2022年に新しい体制を構築し、高深度オミクスアプローチに基づく新たな生体防御医学研究を推進して参ります。今後とも活発な研究活動により、生命現象ならびに疾患発症のメカニズムを解明し、新たな医療イノベーションの創出へ貢献することが、生体防御医学研究所教員・学生・スタッフ一同の願いです。なにとぞ、ご支援賜りますよう心よりお願い申し上げます。