第692回 生医研セミナー(多階層生体防御システム拠点)
ヌクレオチドプール研究センターセミナー

生体防御医学研究所 防御分子構築学分野 客員准教授の松本明郎博士にセミナーをお願いしました。
 今回のセミナーでは、肝不全やアミノ酸代謝異常症で見られるアミノ酸の不均衡な蓄積による病態形成機序について細胞モデルでの研究成果をご講演いただきます。皆様、是非ご来聴下さい。

演題

アミノ酸過負荷によるエネルギー代謝異常

演者

松本 明郎 先生
千葉大学大学院・医学研究院・薬理学 准教授

日時

2015年 3月 5日(木)16:00~17:30

場所

九州大学 病院キャンパス内 生体防御医学研究所 本館1階 会議室
以下の地図の23番の建物になります。
(http://www.kyushu-u.ac.jp/access/map/hospital/hospital.html)

要旨

アミノ酸は生体におけるタンパク質合成やエネルギー代謝に用いられるのに加え、一酸化窒素や硫化水素などの生理的ガス分子の産生にも必須であるため、アミノ酸不足に着目した研究が展開されてきた。一方、肝不全やアミノ酸代謝異常症ではアミノ酸の不均衡な蓄積が病態に関連していることが知られているが、病態形成機序への関連については明らかではない。
そこで、病態に即した濃度でのアミノ酸負荷に高い感受性を示す細胞系(K562−D)を作成し、先天代謝異常症の中で発症頻度の最も高いフェニルケトン尿症(PKU)をモデル疾患として検討を行った。
K562−D細胞は、アミノ酸トランスポーターの発現を増大させることでPhe感受性を増大させ、ミトコンドリアでのATP産生を抑制しmTOR経路を抑制することが新たに示唆された。さらに、ValがPheの細胞毒性を減弱させる作用を有することも見出され、経験則的に知られてきた分岐鎖アミノ酸の治療適用を支持する結果になった。今後の治療戦略開発の契機となることが期待される。

連絡先

九州大学 生体防御医学研究所 脳機能制御学分野
中別府 雄作
電話:092-642-6800