第691回 生医研セミナー(多階層生体防御システム拠点)
ヌクレオチドプール研究センターセミナー

今回は、豊國先生が長年取り組まれてきた「酸化ストレス病理学」の初期から、現在そしてこれからの展望について、ご講演をいただきます。皆様、是非ご来聴下さい。

演題

酸化ストレス病理学の確立とその疾患予防への展望

演者

豊國 伸哉 先生
名古屋大学大学院 医学系研究科 病理病態学講座
生体反応病理学 教授

日時

2015年 2月 20日(金)16:00~17:30

場所

九州大学 病院キャンパス内 生体防御医学研究所 本館1階 会議室
以下の地図の23番の建物になります。
(http://www.kyushu-u.ac.jp/access/map/hospital/hospital.html)

要旨

地球上のすべての生命体において鉄は必須金属であり、ヒトを含む高等生物の生命は、鉄・酸素・食物によって紡がれている。酸素は細胞内で電子の流れを作り出すことにより、制御された生体化学反応を執行するのが主要な役割であるが、体内に取入れられた酸素の数%は活性酸素・フリーラジカルとなり、あらゆる生体分子に切断・修飾・重合などの傷害を与える。この反応は30年代に人工ゴム合成反応として先に実用化され、その後、放射線の生物作用として理解されてきたが、生体に身近な存在ではなかった。ところが1968年にsuperoxide dismutaseが発見されると事態は一変し、活性酸素・フリーラジカルの化学反応が細胞内で常時発生していることが初めて認識されるようになった。しかし、このような概念は1980年代までなかなか病理形態学になじむことはなかった。
 本講演においては、酸化ストレス病理学がどのように確立されてきたのか、発がんを初めとする病態解明にどのように寄与してきたのかについてこれまでの知見を述べ、最後に、今後、社会に対してどのようなことを貢献できるのかを提示したい。

連絡先

九州大学 生体防御医学研究所 脳機能制御学分野
中別府 雄作
電話:092-642-6800