第828回 生医研セミナー(多階層生体防御システム研究拠点)
以下の通り、老化ミニシンポジウムを開催いたします。
皆様のご来聴を心より歓迎いたします。
日時
2022年 11月 22日(火) 16:00〜18:00
場所
病院キャンパス コラボ・ステーションⅠ 2階 視聴覚室
以下の地図の35番の建物です。
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/47904/HOSPTAL_Jp.pdf
講演1
演 題 | 魚が切り拓く、がん・老化の未知の原理 |
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演 者 | 石谷 太 先生 大阪大学 微生物病研究所 生体統御分野・教授 |
要 旨 | 誰もがより長く元気に活躍できる健康長寿社会を実現するためには、がんなどの重大疾病の克服や老化の抑制は重要な課題である。これらの課題に取り組むためには、がんの発生や老化の起点となる基本原理を明らかにし、そこに介入してこれらを予防するアプローチ、すなわち「先制医療」が有効と考えられる。我々の研究室では、がん・老化の未知の原理に迫るために、特徴的なモデル生物と最先端の解析技術を駆使した研究を進めている。最近では、小型魚類ゼブラフィッシュをモデルとしたイメージング解析により、動物組織が免疫細胞を介さずに前がん細胞を感知して排除する「新たながん抑制メカニズム」を発見し、さらに、このメカニズムの破綻によって初期腫瘍が生じる機序も見出した。また一方で、ヒト老化機構の理解を加速するために、脊椎動物の中で最短の寿命を持つターコイズキリフィッシュ(略称キリフィッシュ)を利用した老化機構高速解析系を独自に構築し、これを駆使して新たな“抗老化物質”の候補を見出しつつある。また、本セミナーでは、これら最新の成果とともに、ヒト先制医療への発展を視野に入れた我々の試みもご紹介したい。 |
参考論文 |
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講演2
演 題 | Cellular functionality and plasticity in the senescence spectrum |
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演 者 | 成田 匡志 先生 Professor, Department of Oncology, University of Cambridge |
要 旨 | 老化は、様々な刺激により誘導される過程であり、特徴的な形態的変化と持続的な増殖停止を伴います。老化細胞は周囲との活発なコミュニケーションを通して、免疫系を含む組織微小環境に多彩な影響を与え、最終的には活性化した免疫細胞により除去されることで「解決」に至るとされます。このライフサイクルを逃れた老化細胞の蓄積が個体老化および、がんなど老化関連疾患を助長すると考えられています。細胞老化による悪影響は、細胞が本来の機能を失うこと(degeneration)からくるものと考えられがちかもしれません。対照的に、細胞が新たな機能を獲得するという側面(gain-of-function)が注目されています。細胞機能は組織特異的な遺伝子発現のパタンによって規定さ れ、その違いが細胞の多様性を表わすとも言えそうです。ここでは、「機能獲得」現象としての細胞老化に焦点をあて、その多様性をふくむ細胞老化スペクトラムという考えを紹介します。 |
連絡先
生体防御医学研究所 トランスクリプトミクス分野
大川 恭行
092 (642) 4534