第573回 生医研セミナー(多階層生体防御システム研究拠点)
グローバルCOE理医連携セミナー
免疫機構研究セミナー

下記のとおり、富澤一仁先生によるセミナーを開催致します。 本セミナーでは、アジア人種型2型糖尿病発症の分子機構、tRNA修飾異常と疾患との関連性について紹介していただきます。皆様の積極的なご参加をお待ち致します。

日時平成23年4月12日(火)18時より19時まで

場所馬出医学系キャンパス内 総合研究棟 セミナー室 105
以下の地図の1番になります。
http://www.kyushu-u.ac.jp/access/map/hospital/hospital.html

演題 tRNA修飾異常と疾患:アジア人種型2型糖尿病原因遺伝子とその分子機構

演者富澤 一仁 先生
熊本大学大学院生命科学研究部
分子生理学分野 教授

要旨 欧米人とアジア人において、2型糖尿病の病態が異なることが知られている。欧米人では、インスリン抵抗性が顕著に見られるが、アジア人種では、約半数の糖尿病患者ではインスリン抵抗性がみられず、主にインスリン分泌が少ないことに起因すると考えられている。2007年以降、2型糖尿病患者における大規模遺伝子多型解析疫学研究(GWAS)が世界中で盛んに実施されてきた。これまで90報以上の報告があり、ほぼ全ての論文において、2型糖尿病発症リスクを高める遺伝子変異としてCdk5 regulatory subunit-associated 1 like 1(Cdkal1)が同定された。さらにCdkal1のSNPsは、アジア人種が多く保有することが明らかになった。
Cdkal1は生理機能が全く不明の分子であったが、演者らはリジンに対応するtRNAの37番目のアデニンをチオメチル化する修飾酵素であることを同定した。また、この修飾が欠損 するとリジン翻訳時に誤翻訳が起こりやすくなることが判明した。演者らはCdkal1遺伝子の 膵β細胞特異的欠損マウスを作製し、そのインスリン分泌能などについて調査した。このマウスは、ブドウ糖応答性インスリン分泌が悪く、耐糖能が低下していた。また小胞体の構造異常、小胞体ストレスマーカー遺伝子発現の上昇など小胞体ストレスが認められた。高脂肪食負荷を 与えると、耐糖能異常、インスリン分泌低下、小胞体ストレスがより著明になった。さらに、インスリンのリジン翻訳時に誤翻訳が生じ、成熟インスリンが減少することが明らかになった。

連絡先生体防御医学研究所 ゲノム病態学分野
谷 憲三朗
電話:092-642-6434


Copyright 2003 Medical Institute of Bioregulation Kyushu University. All Rights Reserved.