第 606 回生医研セミナー(多階層生体防御システム研究拠点)
グローバルCOE理医連携セミナー

下記のとおり、山口 良文 先生のセミナーを開催致します。
皆様のご来聴を歓迎いたします。

演題脳発生初期過程における細胞死の生理的意義
〜生体胚でのアポトーシス動態ライブイメージング解析から〜

演者山口 良文 先生
東京大学大学院薬学系研究科遺伝学教室・助教

日時平成24年2月10日(金)17時より18時まで

場所馬出病院キャンパス 総合研究棟1F 101号室
以下の地図の1番の建物になります。
http://www.kyushu-u.ac.jp/access/map/hospital/hospital.html

要旨 細胞死は、多細胞生物体の組織構築・維持において不可避の現象である。しかし、生体内で観察される細胞死の生理的意義は未だ多くが不明のままである。脳発生の初期、神経管閉鎖過程ではアポトーシスが大量に生じることが古くから知られている。アポトーシス実行経路の中でも、ミトコンドリア経路の実行因子を欠いた変異マウス胚は、外脳症や脳室狭窄といった、細胞数が過剰になったかのような表現型を示すことから、アポトーシスは脳発生初期の脳神経細胞数制限に働いていると考えられてきた。しかし私達の解析から、実はこれらの変異マウスにおいて脳神経細胞数は殆ど増加しておらず、脳形態異常の原因は神経管閉鎖不全であることが示唆された。そこで次に、頭部神経管閉鎖期に生じるアポトーシスが脳形態形成にどのような影響を及ぼすのか解明を試みた。アポトーシス実行因子カスパーゼの活性化を生細胞で検出するプローブであるSCAT3を発現するトランスジェニックマウスを樹立し、高速スキャン型共焦点顕微鏡を用いて頭部神経管閉鎖過程のライブイメージングを行なったところ、頭部神経管閉鎖期には振る舞いの異なる二種類のアポトーシスがあること、およびカスパーゼ活性の阻害は頭部神経管閉鎖速度の低下につながること、が明らかになった。神経管閉鎖の完了と時期を同じくして、閉鎖に拮抗する脳室の拡大が生じる。これらの事実から、アポトーシスは円滑な神経管閉鎖の進行を助けることで、神経管閉鎖を一定の時間枠内に完了させるのに役立っていると考えられる。また最近、神経管閉鎖期に生じるアポトーシスが、その後の正常な脳形成にどのように関与するのかについて幾つか知見を得ているので、これらの結果についても紹介したい。

(参考文献)
Yamaguchi, Y et al., Journal of Cell Biology. 195; 1047-1060, 2011

連絡先生体防御医学研究所 細胞統御システム分野 石谷 太(いしたにとおる)
電話:092-642-6789
E-mail:tish@bioreg.kyushu-u.ac.jp

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