第564回 生医研セミナー(多階層生体防御システム研究拠点)
グローバルCOE理医連携セミナー

この度、生体防御医学研究所 防御分子構築学分野 客員准教授に選任されました千葉大学大学院医学研究院薬理学の松本明郎博士に生体防御医学研究所でのセミナーをお願いしました。
セミナーでは、SNO化によるシグナル伝達が細胞間で受け渡される機序の解明についての研究を中心にご講演いただきます。皆様是非ご来聴下さい。

日時平成22年12月21日(火)15時〜17時

場所馬出医学系キャンパス内 生体防御医学研究所 本館1階 会議室
以下の地図の20番になります。
http://www.kyushu-u.ac.jp/access/map/hospital/hospital.html

演題一酸化窒素(NO)による翻訳後修飾:S-nitrosylationとシグナル伝達の制御

演者松本 明郎 先生
千葉大学大学院医学研究院 薬理学 准教授

要旨 呼吸における酸素・二酸化炭素の重要性が示す様に、生体における気体分子は 生理的機能の維持に極めて重要である。細胞内においても、ガス状物質:NO, CO, H2Sなどが恒常的に産生され、生理的機能の維持に密接に関わっていることが明らかにされてきた。なかでも一酸化窒素(NO)は,セカンドメッセンジャーとして細胞外へ伝播することも可能であり、細胞間をつなげる新たなシグナル伝達経路を形成することから、脚光を浴びることとなった(1998年ノーベル医学生理学賞)。ところが、NOは容易に酸化反応を受け、その生理活性を失うため、NOの安定化機構として働くS-ニトロシル(SNO)化反応に注目が集まっている。システインSH基にNOが共有結合するSNO化反応は、NOの安定化に加え反応対象の特異性をも高め、シグナル伝達に必要とされる時間・空間的な制御を可能にしている。そのため、SNO化反応は受容体シグナル,リン酸化,タンパク質複合体形成,転写制御,タンパク質寿命など多くの細胞機能の制御に関わっているのみならず、エピジェネティクス制御を介した神経分化にも必要とされていることが明らかにされた。このようにSNO化による生体機能の調節が次第に明らかになってきている中で、SNO化制御の破綻は喘息・がん・炎症性疾患・アポトーシスなどに関わっていることも知られてきた。そのため、SNO化シグナルの人為的制御法の開発がこれらの疾患の治療に貢献すると考えられ、現在取り組みが進んでいるところである。

連絡先生体防御医学研究所 脳機能制御学分野
中別府 雄作
電話:092-642-6800


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