第13回 (2010年度) 清水孝雄先生 (東大)

諸石 寿朗・立石 悠基(博士課程3年)

毎年恒例となったSSSも今回で13回目を迎え、光栄にも代表を務めさせて頂くことができました。今回も過去のSSSと同様、学生のみなさんに「今一番ご講演を聴いてみたい先生は?」というアンケートをとった結果、最も要望の高かった東京大学の清水孝雄先生にご講演をお願いすることができました。清水先生は東京大学の医学部長も兼任されており、大変ご多忙でいらっしゃることを存じておりましたので、ご講演を断られるかもしれないことを覚悟しつつ、何時間もかけて拙い文章を練り直しながらご講演をお願いするメールを差し上げました。すると、そのわずか数分後に「学生から呼ばれたら、行かざるを得ません」という内容のお返事を頂き、清水先生のお人柄にSSS実行委員一同大変感激したのを覚えております。

SSS当日は、清水先生が福岡に到着されてからご講演までに少し時間がありましたので、清水先生と代表2人とで昼食をご一緒する機会を頂きました。ご趣味の登山やテニスのお話から、今後の医学研究のあり方まで様々なお話をお聞かせ頂きました。大人数になると、中々ゆっくりとしたお話をすることは困難ですので、このような機会が頂けるのは代表の特権だと思いました。

その後のご講演は大変分かりやすく、その背景の面白さと深さに圧倒され、大変良い刺激を受けることができました。我々のために非常にたくさんのスライドを用意して下さり、また当日聴衆に学部生や研究初心者が来ていることをお伝えすると、直前まで聴衆に合わせた分かりやすいスライドになるように変更して下さいました。ご講演の途中で受け付けた質問も後を絶たず、まだご講演予定の1/3くらいしか進んでいないところで大半の時間を使ってしまいました。清水先生のご講演は学会などで何度かお聞きする機会もあったのですが、今回のSSSでは自由に時間を使ってディスカッションができ、よりご研究内容の理解が深まりました。

また、当日は夜遅くまで飲み会にお付き合い頂き、大変面白いお話をお伺いすることが出来ました。ご趣味やご家族、留学中の話から研究のお話までざっくばらんにお聞かせ頂き、清水先生の気さくなお人柄もあって、とても楽しく過ごさせて頂きました。

今回SSSの代表をさせていただいたことで、清水先生のような素晴らしい先生と身近に接する幸運に恵まれました。このような素晴らしい会の開催をサポートして下さった関係者の方々に深く感謝申し上げます。特に、共に会の運営にあたって下さった有志の学生の皆様には本当にお世話になりました。最後になりますが、我々学生の無理なお願いを快くお引き受け下さり、学生へ温かいエールを贈って下さった清水先生、本当にありがとうございました。

(諸石 寿朗)

今回、SSSの代表をするにあたりお呼びする先生からいいお返事がいただけるか、もしいただけた場合は失礼のないように対応できるかが不安な点でした。しかし、1つ目に関しては杞憂に終わりました。なんと、メールを差し上げてわずか9分後に「うむ、こういうお誘いをお断りするわけにはいきません。問題は今の過酷なスケジュールの中で、時間をいかに作るかという事でしょう。時間の調整の上、お引き受けすることとします。」というお返事をいただき、東大医学部長という非常に忙しい中すぐに良い返事をいただいたことに感動しました。

その後のメールのやり取りや当日実際にお会いしてお話をしてもそのお優しい人柄がにじみ出ており人の上に立つ身であれほどのことが出来るのか、自分も将来そのような人になりたいと思わされました。

2つ目に関してはいろいろとつたないところもありましたが研究室の皆様のご協力によりなんとか無事に終えることが出来ました。

科学者としてもあきらめない姿勢、学生の教育に熱心な姿勢など、学ぶことの多い清水先生に間近にお話を聞くことが出来、今後の研究そして人生にいかしていきたいと思います。本当にありがとうございました

(立石 悠基)

参加していただいた学生および先生方より御感想をいただきましたので、以下に紹介させていただきます。

清水先生のリン脂質に関する御講演は、これまであまりこの分野の話を聴く機会がなかった私にとっても、大変分かりやすく、興味深いものでした。時間の関係で先生が準備されていた全てのスライドを見られなかったのが残念でしたが、質疑応答の時間には1つ1つの質問に真剣に答えていただき、学生と対等に接する姿勢に非常に感銘を受けました。御講演後の宴会にも夜遅くまでお付き合いいただき、先生の飾らないお人柄を身近に感じることができました。このような科学者としても一人の人間としても素晴らしい先生と接する機会をもてることは、大変恵まれた環境なのだと心底実感しました。SSSの意義は勉強は勿論ですが、超一流の科学者の人となりに触れることにあるのだと改めて感じました。

今回も印象的だったのは、SSSでのご講演のお願いを、清水先生が異例の早さで快く承諾して下さったことです。過去にお越し下さった先生方も、未来を担う若い人たちのためなら、とお忙しい中にもかかわらず喜んでお越し下さいました。やはり、一流の研究者は人格者なのだとうれしく思い、自分もそれに倣おうと奮起致しました。また、清水先生のご講演を拝聴するのは初めてのことで、これまであまり触れたことのなかった脂質生物学の魅力や可能性を教えて頂くことができました。脂質は、用途に合った様々な構成の生体膜を形成しているだけにとどまらず、それをプールとして多様な活性物質として機能する様を見るにつれ、また、これらの制御が多種の酵素の使いわけと、おそらく協調によってなされていることを考えると、なんと巧みで精密な機構なのだろうと感動しました。脂質という、なかなか解析が難しい物質を相手にしても怯まず、それどころか情熱を注ぎ続けて脂質生物学の基礎を築いて下さった清水先生は、本当に偉大だと思います。ご講演の後にも、そんな清水先生もかつて苦渋の日々を乗り越えてきたというお話等を聞かせて頂いたことを励みに、今後も研究によりいっそう勤しみたいと思います。この度は本当にありがとうございました。

セミナー、宴会を通して一番感じたことは、清水先生は常にいろんな意見に対して注意深く耳を傾けていらっしゃるのだなということでした。東京大学の医学部長という立場にありながら、学生である私たちの質問や発言でさえも、真剣に聞いてくれているようでした。それはセミナーの時だけでなく、宴会の時も同様で、常に人の意見を素直に受け止め、すぐに反映しようとされているように感じました。常に初心を忘れない姿はぜひ見習わないといけません。また、清水先生は人格的に大変素晴らしいお方だという話は伺ってはいましたが、ただ固く真面目なだけではなく非常にユーモアも豊かで、宴会では笑いが絶えず、楽しい時間を過ごすことが出来ました。また一つ、目指すべき研究者像が増えました。

素晴らしい先生方のご講演を拝聴することのできるSSSを毎回楽しみにしています。今回の清水先生のご講演もやはり素晴らしく、貴重な時間を頂くことができました。清水先生は今回のセミナーが学生によるものであることをご配慮いただき、ご講演の内容からスライドの構成まで考えて頂いていたことにとても感激しました。私は脂質の分野に不勉強であったため少し不安がありましたが、とても理解しやすく自然と頭に入ってくるようなご講演でした。先生のご研究のおもしろさはもちろんのこと、脂質研究の難しさやこれからのことまで、とても刺激的で引き込まれる2時間でした。

学問に対して大きな関心を持ち、真摯な姿勢で生命の根本原理を理解しようと努め、自分の理解した知識は周囲の人々に惜しみなく伝え、心躍らせながらディスカッションをし、生命全体に深い慈しみの心を持ち続けられる、それが僕の目指す科学者像です。SSSでお会いした清水先生はまさにそんな科学者を地で行く方でした。僕ら学生の質問に真剣に耳を傾け、対等にディスカッションをしてくださる清水先生を目の当たりにして、どう生きていくべきかを教えて頂いたような気がします。実験がうまくいかなかったり、忙しかったりして自分の理想像を忘れてしまいそうな時は、清水先生を思い出し、精進していきたいと思います。激務の中、九州まで足を運んで下さり、本当にありがとうございました。

はじめに、お忙しい中講演してくださった清水先生、オーガナイズしてくださったSSSのメンバーに感謝申し上げます。清水先生には早石研究室で研究を始めた頃から最近の研究までお話しいただき、とても充実した2時間30分を過ごすことができました。研究内容を楽しくお話する姿、質問を一つ一つ丁寧に答える姿がとても印象的でした。夜の食事会でも研究からプライベートまで何でもオープンにお話してくださり、たった一日でしたが先生の素晴らしい人格を感じ取ることができました。講演内容は予定の1/3しかお話できていないとのことでしたので、残りの2/3、ぜひまたお聞かせください。

世界のトップで活躍される先生のお話を間近で聞くことができ、大変貴重な経験になりました。特に私たちの質問に対し真剣にディスカッションしていただけたのはすごく印象的で感動をおぼえました。お酒を飲みながら先生の研究絵の考え方や留学の思い出を聞くと、若いころは研究に悩み苦労していらっしゃったこと、またそのうえで今も研究を楽しんでいらっしゃることは非常に勇気づけられました。

清水先生、このたびSSSにお越しいただきありがとうございました。先生のこれまでの研究生活で培われた知恵や知識に触れることができ、大変有意義な時間を過ごすことができました。私は今回清水先生の講演を通じ、清水先生の研究者として、また教育者としての姿勢に大変感銘を受けました。特に質疑応答で、学生の質問に一つ一つ丁寧に答えて下さった点、面白いアイデアがあればその場でメモされていた点が非常に印象的でした。こうした当たり前のことが当たり前にできるというのは本当にすごいことだと思います。私も先生のような素晴らしい人間性と飽くなき向上心を持った研究者になりたいと思います。

大変お忙しい中、私達のために丸一日も貴重な時間を割いていただいて、本当にありがとうございました。脂質やその機能の多様性を分かり易く丁寧にご解説いただいただけでなく、質疑応答でも一人一人の質問に非常に丁寧に答えて下さいました。清水先生のご回答からは、「きちんと伝えたい」というその真剣さを強く感じました。「人間力」というものが研究者にとって(だけではないですが)非常にプラス要素であるという良い例を肌で感じることができました。飲み会では先生のバイタリティーに驚かされたのと同時に、アンテナといいますか、強い好奇心をお持ちだなというのが印象的で、共感させていただきました。最後の方で記念撮影をさせていただいたのですが、後で見返してみますと、清水先生を含めてそこに写った全ての方がとても良い笑顔をされていることに気が付きました。セミナーが始まってから最後までそのような雰囲気が漂っていました。ありがとうございました。

脂質生物学という、普段自分があまり接していない分野の講演でしたが、先生の非常に分かりやすく丁寧な説に、どんどん吸い込まれていきあっというまの2時間でした。膜脂質の多様性からその生物学的意義まで幅広く理解する事ができ、脂質生物学がこれからの分野であることを実感できました。今では最も興味を持つ分野のひとつになっております。また、講演の内容もさることながら、質疑応答や飲み会の席において、僕たち学生の話に熱心に受け答えしてくださる姿や、非常に温かいお人柄に、一流の科学者はなんたるかを垣間見ることができた気が致します。今回のSSSでは、清水先生にサイエンスに対する考え方や姿勢まで非常に多くのことを学ぶことができました。お忙しい中だったと思いますが、本当にありがとうございました。

清水先生は偉大な研究者であり、教育者であり、そして人格者であるということを伺っていましたが、実際にお会いしてまったくその通りの方だなと思いました。特に、丁寧に言葉を選びながらお話しされるところや、一つ一つの質問に真摯に対応し、「それはいい質問です」とコメントを添えられるところが印象に残っています。脂質はこれから益々発展する分野であるとおっしゃっていた先生の活き活きとした表情も忘れられません。先生の御講演のおかげで、脂質には苦手意識があった私もその面白さや重要さを感じることができました。また、大変多忙でいらっしゃる中、研究以外のことにもアンテナを張って楽しみを見出す、という先生の生き方そのものにも惹かれました。そのように活力に溢れた清水先生と素晴らしい時間を過ごすことができ、本当に有難く思います。先生から頂いたエネルギーを糧にこれからも頑張っていこうと思いました。

非常にご多忙の中、御講演を聞かせて頂き、感激しました。初めてSSSに参加しましたが、説明を丁寧にして下さったため、大変分かりやすかったです。また、不勉強ながら、リン脂質代謝の研究に関して今回を機会に学ばせて頂きましたが、御講演を通して研究の面白さが直に伝わってきて、大変、刺激になりました。質疑応答やその後の飲み会を通しても、清水先生の科学、そして人生に対する真摯な姿勢が伝わり、また、新しい事にチャレンジする姿を通し、自分が今後、科学者として成長する上で、大切な事柄を色々、学ばせて頂いたと感じています。これから、一歩でも先生に近づけるよう努力して行きたいと思っております。このような貴重な機会を時間を割いて与えて頂き、大変有り難うございました。

この度はお忙しい中、はるばる博多の地へお越しいただきありがとうございました。さらにセミナー、その後の懇親会ともに大変面白いお話を聞かせていただき感謝の極みです。「脂質」というテーマの話を聴くのは、私にとって4年ほど前の生化学の講義以来だったかもしれません。当時、おそらく横溝先生から講義していただいたことを思い返しますと、無理やりに知識を詰め込んで何とか試験を乗り切った印象が否めません。しかしながら、病棟で臨床実習を行い且つ研究世界にも手を染めている今、清水先生の言葉であらためて講義いただけるというのは、以前は汲み得なかった、先生方の「脂質」に注ぐ情熱を再度汲むチャンスをいただけたようで興奮とともに拝聴しました。そして、脂質に限らず、研究の世界の魅力を大いに汲み取ることができたと思います。「人間はそんなにロジカルに生きていない。」懇親会で聴いた先生の言葉です。長い研究歴と名誉ある経歴をお持ちの清水先生にあっても、不遇の時期があり、環境に影響され、時に偶然の力を借り、そして今に至っておられるというのは、これから研究の世界でキャリアを積もうとする我々にとって非常に勇気づけられる事実でした。なにか1つブレないポリシーをもち、そのほかではしなやかに、そして少々楽観的に生きよう、という私の考え方とも合致する点が多く、ますます自信を持ってこの世界を歩んでいけそうです。研究での実績は勿論のこと、温和で柔軟で若々しい精神をお持ちの清水先生は今後とも私にとって憧れの方であり続けると思います。最後になりますが、先生も言われていたように、MSの進歩により脂質の世界が一層華やいできて、まさに今後次々と大きな鉱脈が発見されることでしょう。学部生のこの時分に、「脂質」という輝ける研究分野があることを清水先生から直々にご教授いただけたこと大変光栄に思います。あらためてありがとうございました。

研究者としての経歴、脂質代謝からmixiや登山のことなど様々なお話を聞かせていただき、大変楽しいまた有意義な時間を過ごすことができました。ありがとうございました。中でも一番印象的であったのは「競争相手をいかにコラボレーターにするかが研究者として一番大切なことだ。」というノックアウトマウスにまつわるお話でした。先生のお人柄があってこそできることなのだろうと思い、自分も科学力はもちろんのこと人間としてもっと魅力のある人になりたいという熱い想いが湧いてきました。先生とお話しする中で「実るほど頭をたれる稲穂かな」という言葉が頭からはなれませんでした。目標としたい先生と出会うことができて忘れられない一日となりました。ありがとうございました。

九州大学 生体防御医学研究所
分子医科学分野
諸石 寿朗・立石 悠基(博士課程3年)