第10回 (2009年度)・中西重忠先生 (大阪バイオサイエンス研究所)

松崎芙美子・武石昭一郎 (博士課程3年)

思いがけずSSSの代表を務めさせて頂くことが決定してから、瞬く間に時間が過ぎ去ったように思います。今回も例年通りアンケートを行いました結果、中西重忠先生にご講演をお願いすることとなりました。著名な先生にメールを差し上げることなど初めてのことなので、何時間もかけて文章を推敲し、ふるえる指で送信ボタンを押しました。数日後に中西先生から、わざわざ速達で、了解のお手紙と共に先生の自伝が届いた時には、号外を配って回りたい衝動にかられましたが、我慢しました。

自分の興味・適性に合った研究分野や場所を見つけて、それぞれに持っている能力を十分に発揮してほしいという願いの込められたメッセージから始まったご講演は、神経回路という複雑なものを研究対象としながらも、適確な系の選択と新しい方法論の構築によって次々と新たな発見をなさっているもので、大変素晴らしいものでした。質疑応答の時間には、そう簡単に新たな実験系を構築できるものではなく、何年もかかってやっと成功したものなのだというお話を伺い、それでもなお、新しい方法を開発することで既存の方法ではできなかった発見をする、というご自身の研究姿勢を貫かれていることに感銘を受けました。研究結果に対する質問もさながら、研究への取り組み方や科学者としての喜びといった哲学的な質問も多く飛び交い、学生にとっては今後の研究人生の大きな糧になるような、本当に貴重なお話を伺うことができました。

ご講演後のわずかな休憩時間にも、若い研究者が自分自身の興味を知り、自分に合った研究分野・研究室を選択するための具体的な方法を教えて下さり、今まさに将来の選択の岐路に立とうとしている私には、目からうろこが落ちる思いでした。その後も私たち学生に夜中までお付き合い下さり、麻雀旅行の思い出話から大学教授の選出方法まで、非常に様々なお話をして下さいました。私たちには、初めて聞くようなお話ばかりで本当に興味深く、また、先生自身の気さくなお人柄もあって、とても楽しく過ごさせて頂きました。

今回、中西先生のお話を直に拝聴する機会に恵まれて、先生の研究成果をご紹介頂いたり科学者としての哲学を学べただけでなく、私たち学生のことを心から応援して下さっているのを感じることが出来て、大変うれしく思いました。同時に、中西先生が普段から若い世代の発展のために働きかけて下さっていたり、先生自身も学生の個性と可能性を楽しんでいらっしゃるご様子なのが、本当に励みになりました。このような素晴らしい会の運営に携わらせて頂いたこと、また、会の開催をサポートして下さったことに、関係者の皆様方には深く感謝申し上げます。特に共に会の運営にあたって下さった有志の学生の皆さんには、感謝しきれない思いでいっぱいです。最後になりますが、無理なお願いを快く引き受けて下さり、そして、私たち学生へ温かいエールを贈って下さった中西先生、本当にありがとうございました。

(松崎 芙美子)

参加していただいた学生および先生方より御感想をいただきましたので、以下に紹介させていただきます。

この度は貴重な御講演本当にありがとうございました。僕が臨床から基礎に入ってまだ1週間、右も左もわからないまま暗中模索しています。大学院に入って初めてのセミナーが中西先生の御講演だった事本当に幸運だったと思っています。顆粒細胞からの神経伝達を抑えるシステムの構築、アウトプット不可になるという仮説の構築その他、発想の展開・推論の立て方、その精密さに感嘆せざるを得なかったです。また中西先生の科学者としての姿勢にも感銘を受けました。自分が基礎を選んだ理由はいくつかあるのですが、ただ何となく漠然と惹かれた部分も強く、うまく言葉で説明できないもやもやとしたものがあったのですが、「何かを発見した時の喜びは、自然の美しさを見た時の喜びだ。」という言葉で、「ああ、なるほど。」と何となく納得すると共に、自分もそういう風に言える位精一杯今を生きていこうという決心を新たにできたような気がします。今後この先何かにつまずいた時はこの言葉を励みに頑張っていこうと思います。お忙しい中本当にありがとうございました。

今回初めてSSSに参加させて頂きました。学生の要望に応じて一流の先生方が講演に来て活発に討論して下さるのは、我々若い研究者にとってとても刺激になり、自分の将来像を考える上でとてもいいお手本になると思います。素晴らしい企画だと思いました。中西先生にご講演を生で聴かせていただき、また我々のような若輩者と真摯に向き合って下さって、本当に有り難く感じました。その後の飲み会でも、科学に向かう姿勢や、科学者を育てる理念などをお聞かせいただいて大変勉強になったとともに、自分の将来について真剣に考える良い機会になりました。中西先生から教わったことを心に抱きながら、これからの研究生活を楽しんでいきたいと思います。

SSSとは、研究だけではなくその先生の全てを学べる場だと思います。普通ではものすごく広い会場で遠くからしか聞けないような話を身近に聞くことができ、また大会場では聞きにくいような質問も気軽にすることができるため、偉大な先生の生の声を感じることが出来ました。中西先生はご自身の確立した哲学を持っておられ、飲み会では思う存分その哲学を学ぶことができました。中西先生の考えをどれだけ理解できたかは分かりませんが、今日学んだことが自分の研究者人生において、必ず役に立つ時が来ると思います。有意義な時間を過ごさせていただいて心から感謝しています。

SSSの醍醐味は、最先端の研究を肌身で感じられることはもちろんですが、何より一流と呼ばれる先生と直接お話でき、研究者としての生き方を学べる点にあると思います。中西先生は私たち学生に普段からいかに考えどう過ごすべきか、先生の実体験と共にお話しいただき、非常に身の引き締まる思いでした。先生の「人の才能はそれぞれ違うものだから、自分はどういう才能があるか常に考えなさい」という言葉は、一生忘れないと思います。このような貴重な機会を与えて下さり、中西先生とSSSに感謝します。

サイエンスっておもしろい!これが今回の中西先生のセミナーの率直な感想でした。御講演では大きく3つのテーマにわけてお話しされていましたが、どれもこれも実験手法からすごい工夫をこなし、結果もエレガントで、そして何より先生の説明がわかりやすくて、90分のセミナーはあっというまに終わってしまいました。結果だけお話を聞くと簡単そうに見えましたが、そんなことはないそうで、実験手法に関しては、常日頃いい案がないかアイディアを絞り出し、結果に関してもこんなに上手くいくのは100に1つだとおっしゃっていたので、偉大な先生でも苦労をされているお話を聞くと、自分ももっと頑張ろうと奮い立たされました。こういった学生主体のセミナーは非常にいいとおっしゃっていた先生、またお話を聞かせてください!

今回初めてSSSに参加しました。九州という場所がら、なかなか有名な先生のセミナーを聞く機会がない我々にとって学生自身が聞きたいと思う先生を呼んでセミナーをしてもらうSSSは非常に有意義なことだと思いました。今回、中西先生という著名な先生のセミナーを聞くというだけでなく、先生自身の研究への考え方や若い人々へのメッセージをも聞くことができたことが非常にためになりました。また、先生がお話になった中で印象に残った言葉は“実験が成功した時に自然の美しさを感じることができる”という言葉でした。自然の美しさを感じることができるよう今後も自分なりに研究をしていこうと思いました。

中西先生の御講演は脳科学として面白かったのは言うまでもありませんが、随所に先生の人生の哲学が垣間見えて大変意義深いものでした。ご講演を聴きに来ていた方にも同様の感想を持たれた方が多かったようで、質疑応答の時間に先生の科学に対する姿勢を問う質問が多く出たのがそれを反映していたのではないかと思います。御講演当日に大阪からお越しいただいたにも関わらず、宴会にも0時過ぎまでお付き合いいただき、この分野の第一人者である先生と身近に接することができたのは大変貴重な経験でした。中西先生はお話されるのがお好きな方のようで、大学へ来られるタクシーの中、御講演直後の立ち話、その後の宴会でもずっと熱く語っておられましたが、どのお話も大変勉強になりました。我々若手にとって今年度のSSSは非常にメッセージの強いものになったと思います。

毎年日本が世界に誇るトップサイエンティストを学生がお招きする中山研恒例行事のSSSに初参加できるということでとても楽しみにしていました。セミナーもよくある分生のようなだだっ広い会場ではなく、生医研会議室ということで講演者の中西先生との距離もとても近く、緊張感のある大変有意義なもので、神経の分野など素人同然の私でも理解しやすい丁寧なスライドで90分間存分に中西先生の研究テーマを楽しむことができました。飲み会の席では、本庶先生方と切磋琢磨された大学院生時代のお話や、留学中の体験談や、今の若手研究者を育てるための中西先生の教育哲学、さらには科学の世界を少しでもいい方向に向けるための実際の活動など、先生のサイエンスに捧げる情熱を時に笑いあり、時に熱く語っていただき、我々若手研究者も今以上に頑張らなければいけないと気が引き締まりました。

SSSは著名な先生のお話を聞ける機会としてとても楽しみにしているセミナーです。今回も中西先生のお話をお聞きすることができ、とても貴重な時間を過ごさせていただきました。中西先生はまだまだ未知なことの多い分野に、新しい技術と戦略で挑戦し続けられていることに感銘を受けました。ご講演後の懇親会でも学生時代のことや留学のお話など、とても刺激的かつ見習うべきことばかりで、大先輩の貴重な体験談をお聞きすることができたことはとても有意義な時間であったと思います。サイエンスに対する姿勢や戦略はもちろんのこと、研究者にとっての大事なことや戦略についてなど、これから私達が目指すべき道を示していただきました。

九州大学 生体防御医学研究所
分子発現制御学分野
松崎芙美子・武石昭一郎 (博士課程3年)