第8回 (2006年度)・廣川信隆先生(東大)

担当 中川 直(博士課程3年)

第8回SSSはアンケートの結果、東京大学の廣川信隆先生に御講演をお願いすることになりました。廣川先生は研究科長も兼任されており、大変お忙しいでしょうから、断られるかもしれないと危惧しつつ、御講演依頼のメールを出しました。その結果、翌日すぐに「喜んで引き受けます。」とのお返事をいただき、たいへん嬉しく感じました。

メールによる数回の打ち合わせのあと、当日を迎えました。当日は空港まで先生をお迎えし、生医研に到着後すぐに御講演をしていただきました。大学院時代の研究から最先端の研究まで、さらには大学生当時の状況や、なぜ基礎医学を志されたかということまで、動画を多く交えて御紹介していただき、非常にわかりやすく感動的な御講演でした。御講演後質問を受け付けたところ、あまりに質問者が多く、予定していた懇親会の時間をまるまる使っても足りず、最後は強引に打ち切らせていただきました。これは私の時間設定のミスであり、反省しております。御講演後すぐに先生のお好みと聞いていたイカ活造りのお店に先生をお連れしました。その場での議論も大いに盛り上がり、2次会のワインバーまでお付き合いいただきました。ここで先生が特に強調されていたことは、科学はそれほど “あまい”ものではなく“戦い”であること、特に“アメリカの研究者たちとの戦い”であるということでした。これから研究者としてやっていこうとしている私たち大学院生には、非常に貴重な教訓となりました。最後に先生を宿までお送りしましたが、そのとき「楽しかった」と言っていただいたことで、本会は成功であったとの思いを強くしました。

今回SSSを担当させていただいて、非常に多くのことを学び、経験することができました。とてもやりがいのある仕事と思うので、次回以降の担当者にもがんばっていただきたいと思います。最後にいろいろと手伝っていただいた大学院生の皆さま、御協力誠にありがとうございました。

参加していただいた学生および先生方より御感想をいただきましたので、以下に紹介させていただきます。

「廣川先生のお話は広い会場で拝聴することが多いのですが、今回は比較的小さな会場でしたので、いつもにまして廣川先生のお仕事の迫力を感じることができ、またその研究分野の壮大さに感動することができました。」

「研究対象が生物学的に重要かつ興味深いテーマに焦点が当てられており、徹底した解析がなされていました。理解しやすいお話しぶりも印象的でした。素晴らしい話をじかに聴くことが出来てとても良かったです。」

「非常に有意義な時間をすごすことが出来ました。セミナーの充実度もさることながら、じかに廣川先生のお話を、お酒を交えながら聞くことが出来たところが良かったです。廣川先生には、非常に親切にラボの話や世界の研究の情勢など、普通ではなかなか聞くことが出来ないようなことまで教えていただき、研究のことだけでなく社会的なことまで勉強になりました。今後もSSSが続いて、いろいろな先生のお話が聞けることを楽しみにしています。」

「SSSでは毎回すごく有名な先生方が講演に来られますが、御講演のあと、気軽に先生とお話ができるのが毎回すごく楽しみです。確かに九州大学にいると、偉い先生方の講演を聞く機会が少ないと言えば少ないですが、だからと言って全くないわけではなく、大きな学会に行けば聴講する機会はしばしばあります。しかしながら、そういった先生方と科学に関することはもちろん、科学に直接関係ない話までざっくばらんにお話できる機会は例え東京や関西にいてもそうはないと思います。ですから、今後SSSに参加される学生さん達にはぜひ、最後の飲み会まで付き合って、酔っぱらったお偉い先生と友達になる位のノリで積極的に自分の考え方をぶつけてみるのも一興かと思います。」

「研究、政治、生活を含めたさまざまな場面で、熟慮された優先順位にのっとって行動されている様子が伺えました。また、無駄を切り捨て、大事な事にとことんまで取り組むという秩序だった姿勢は、非常に勉強になりました。サイエンスにおいて、日本人あるいは日本という国が決して欧米にひけをとっていないとお話しされていましたが、先生は日本人の研究者にとって大変良いお手本であることを感じました。また、予想に反して大変フレンドリーな先生でした。そして、予想通りとても頭のスマートな先生でした。この人柄(人格)も、サイエンスで成功するための重要な鍵なのだろうと感じました。」

「今回、廣川先生のような著名な先生のセミナーを聞けるだけでなく、私たちのような若輩者の話に耳を傾け、真摯にお答えを返して頂けるという機会に巡り合えて、本当に幸運であったと思います。先生のスマートなプレゼンテーションを聞くと、あたかも簡単に様々なKIFsの機能解析をやってのけたかのように錯覚してしまいましたが、その後の懇親会で、廣川先生に「結果の背景に、膨大な試行錯誤があるのは当然だ」とお言葉を頂いたことに、普段失敗ばかりの私は、ほっとする反面、努力なしに結果を出すことはできないのだと、叱咤激励される思いでした。また、科学に向かう姿勢や、科学者を育てる理念には、私のような駆け出しの大学院生には思いもよらないような壮大なお考えを聞かせて頂き、自分の将来について真剣に考える良い機会になりました。廣川先生のような、大御所の先生を前に何を喋っていいものか分からず、ただ頷くしかできなかった不甲斐無い自分ですが、廣川先生が興味深いお話をたくさんして下さったおかげで、人生で忘れられない有意義なセミナーであったと思います。」

九州大学 生体防御医学研究所
分子発現制御学分野
中川 直