第784回 生医研セミナー(多階層生体防御システム研究拠点)

下記の通り、豊國 伸哉 先生によるセミナーを開催致します。皆様のご来聴を心より歓迎いたします。

※セミナーは英語で行われます。(Seminar in English)

演題 / Title

がん研究におけるフェロトーシス
Ferroptosis in Cancer Research

演者 / Speaker

豊國 伸哉 先生
名古屋大学大学院医学系研究科 生体反応病理学・教授

日時 / Date

2019年1月29日(火) Jan. 29(Tue), 2019
16:00~17:00

場所 / Venue

病院キャンパス 生体防御医学研究所 本館1階 会議室
以下の地図の31番です。
(http://www.kyushu-u.ac.jp/f/33951/2018hospital_2.pdf)

Seminar Room, 1F, Main Building, Medical Institute of Bioregulation, Hospital Campus
No.31 on the following linked map.
(http://www.kyushu-u.ac.jp/f/33952/2018hospital_2-en.pdf)

要 旨 / Abstract

鉄なしで生存できる独立した生命体は地球上には存在しないことからもわかるように、生命現象において鉄は根源的な元素である。哺乳類において鉄は欠乏すると貧血をきたすが、逆に過剰鉄は発がんと密接な関係がある。鉄ニトリロ三酢酸投与によりwild-typeラットに発症する腎癌はゲノム変化がヒト癌に酷似する。また、アスベストによる中皮腫発がんにおいても、局所の鉄過剰が極めて重要であることが判明し、瀉血にその予防効果があることを明らかにした。未だ発症はないが、労働環境で危惧されているカーボンナノチューブによる中皮腫発がんもアスベストと同様の病態であることが判明している。さて、2012年の報告を皮切りに新たな制御性壊死としてフェロトーシスferroptosisが注目されている。これは、2価鉄依存性の脂質過酸化を伴う細胞死である。その制御因子としては、cystine/glutamate antiporter(SLC7A11)やGPX4など、多数のものが明らかにされている。これはまさに鉄とイオウのバランスの問題であり、がんの起源を暗示している。このように推論すると、がんは鉄と酸素を使用することに対する一種の副作用とも理解でき、がん細胞はiron addiction with ferroptosis resistanceを獲得している。最近開発されたFe(II)特異的なプローブによればがん細胞は非がん細胞より多量の触媒性Fe(II)を有する。新たな治療戦略として、局所に酸化ストレスを加えることのできる低温プラズマも注目される。

参考文献 / References

  1. Toyokuni S, et al.
    Iron and thiol redox signaling in cancer.
    Free Radic Biol Med 108: 610-626, 2017.
  2. Stockwell BR, Toyokuni S, et al.
    Ferroptosis: a regulated cell death nexus linking metabolism, redox biology, and disease.
    Cell 171:273-285, 2017.
  3. Ohara Y, Toyokuni S, et al.
    Phlebotomy as a preventive measure for crocidolite-induced mesothelioma in male rats.
    Cancer Sci 109: 330-339, 2018.

連絡先 / Contact

生体防御医学研究所 脳機能制御学分野
中別府 雄作
092(642)6800

Division of Neurofunctional Genomics, Department of Immunobiology and Neuroscience, Medical Institute of Bioregulation
Yusaku Nakabeppu
TEL: 092(642)6800