第679回 生医研セミナー(多階層生体防御システム研究拠点)
グローバルCOE理医連携セミナー

下記の通り、玉田先生によるセミナーを開催致します。

玉田先生は本学卒業後、九州大学病院泌尿器科を経て、米国Johns-Hopkins大学においてこれまで腫瘍免疫領域で多くの業績をあげられ、ご帰国後も特に免疫チェックポイント阻害剤やCAR-T研究でご活躍されています。今回は下記の内容でご講演をいただきます。皆様の積極的なご参加をお待ちします。

演題

キメラ抗原受容体を利用したがん免疫療法の進展

演者

玉田 耕治 教授
山口大学医学系研究科、免疫学

日時

2014年 8月19日(火) 18:00~19:00

場所

九州大学 病院キャンパス内 総合研究棟 セミナー室105
以下の地図の1番の建物になります。
(http://www.kyushu-u.ac.jp/access/map/hospital/hospital.html)

要旨

がんに対する免疫療法の達成には、適切な標的抗原の同定と選択、標的抗原に対する強力な免疫応答の誘導、そしてがん免疫逃避機構の克服が必要である。これらの必要性を満たす手法として、我々はキメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor: CAR)を利用したがん免疫療法の改良を進めている。CARはがん細胞表面抗原を認識する一本鎖抗体とT細胞の活性化を誘導するCD3ζ鎖、CD28、4-1BBなどの細胞内シグナル伝達領域を融合させたキメラ蛋白である。患者由来のT細胞にCARを遺伝子導入して誘導するCAR-T細胞は、がん細胞を認識してT細胞受容体シグナルと刺激性共シグナルを伝達することにより、活性化・増殖してがん細胞を攻撃する。CAR-T細胞療法は、現在欧米で多くの臨床試験が実施されており、特に血液系悪性腫瘍ではCD19を標的分子としたCAR-T細胞療法による優れた治療効果が報告されている。しかしながら、現在のCAR-T細胞技術は未だ完成した治療法ではなく、克服すべき問題点が存在する。例えば、(1)標的とする分子が単一のがん細胞表面分子であるため、その発現の低下や変異に対する脆弱性がある、(2)がん環境における免疫抑制機構への対応策が十分にとられていない、(3)CAR-T細胞の移入により、サイトカインストームや正常細胞の傷害による有害事象が起こりうる、などが挙げられる。我々はCAR構造にさまざまな改良を加えることで、このような技術的問題点を克服した次世代型CAR-T細胞療法の開発を目指している。本セミナーではそのような試みについて紹介し、CAR-T細胞を利用した免疫療法の将来展望について解説する。

連絡先

生体防御医学研究所 ゲノム病態学分野
谷 憲三朗
電話:092-642-6434