第659回 生医研セミナー(多階層生体防御システム研究拠点)
ゲノミクスエピゲノミクス研究拠点セミナー

下記のとおり、大阪大学大学院の浦聖恵先生によるセミナーを開催致します。
ご興味のある皆様のご来聴を心より歓迎いたします。

演題

ヒストンの多種多様性を介したエピジェネティク制御

演者

浦 聖恵 先生
大阪大学大学院・医学系研究科・遺伝子治療学・准教授
科学技術振興機構 さきがけ

日時

2013年11月29日(金) 15:30~16:30

場所

九州大学 病院キャンパス内 総合研究棟1階セミナー室105
以下の地図の1番の建物になります。
(http://www.kyushu-u.ac.jp/access/map/hospital/hospital.html)

要旨

真核生物のDNAはヒストンタンパク質と結合してヌクレオソームを基本単位とするクロマチン構造を形成し、核内に高次に折り畳まれて存在する。ヒストンは、分子進化の速度が極めて遅いタンパク質で、アセチル化やメチル化などによって、多種多様に変化する。近年、このヒストンの多種多様性が、DNA塩基配列を越えた遺伝子機能制御“エピジェネティクス制御”の重要な分子基盤になるとの考えが定着してきたが、ヒストンの多種多様性の分子機能は未だに謎に包まれている。この問いに答えるために、私達はリンカーヒストンH1と、コアヒストンH3の36番目リジン残基のメチル化 (H3K36me)酵素 Wolf-Hirschhorn syndrome candidate 1 (Whsc1)に焦点を当てて、再構成クロマチンやES細胞・マウス個体レベルでクロマチンの構造と機能解析を進めている。最近、Whsc1欠損マウスの解析から、転写活性領域をマークするH3K36me酵素がDNA損傷応答に深く関わっていることが明らかになって来た。単純に転写活性化状態を正か不に2分する従来の転写制御と次元の異なる、ヒストン修飾を介した転写-DNA損傷共役制御について議論したい。

業績

  1. Nimura K., et al. A histone H3 lysine 36 trimethyltransferase linkes Nkx2-5 to Wolf-Hirschhorn syndrome. Nature, 460, 287-291, 2009
  2. Kashiwagi K., et al. DNA methyltransferase 3b preferentially associates with condensed chromatin. Nucleic Acids Res., 39, 874-888, 2011
  3. Sarai N., et al. WHSC1 links transcription elongation to HIRA-mediated histone H3.3 deposition in activated genes. EMBO J.,32, 2392-2406, 2013

連絡先

生体防御医学研究所 エピゲノム学分野 佐々木 裕之
Division of Epigenomics, MIB, Hiroyuki SASAKI
電話:092-642-6759