研究所の使命

所長 中別府 雄作
Director Yusaku Nakabeppu

2019年4月1日


 生体防御医学研究所は生体の恒常性を維持するために重要な「生体防御」を研究テーマに据え、生命現象の本質に迫る基礎研究を展開するとともに、生体防御機構の破綻による疾患の発症機序の解明と診断、治療法の確立を目指した研究を展開しています。これまでも国内屈指の実績を誇り、国際的にも高い評価を受けて参りましたが、現在さらに多角的に生体防御システムを解明するための世界的な研究教育拠点となることを目指しています。

 本研究所は、1982年4月に九州大学温泉治療学研究所(大分県別府市)と医学部附属癌研究施設(病院地区)の統合、改組により発足しました。2001年4月には、遺伝情報実験施設を統合して大幅な再編を行い、3大部門(ゲノム機能制御学部門、細胞機能制御学部門、個体機能制御学部門:計12分野)、2附属研究センター(遺伝情報実験センター、感染防御研究センター:計8分野)の構成となりました。その後、2009年4月に感染ネットワーク研究センターを設置し、2010年4月に感染防御研究センターを生体多階層システム研究センターに改組しました。本研究所は、2010年度に文部科学省から共同利用・共同研究拠点「多階層生体防御システム研究拠点」として認定され、生体防御に関連する研究を行っている国内外の多くの研究者と共同研究を推進してきました。2011年4月には別府地区の病院と臨床3分野を九州大学病院へ移管し、さらに先端研究に集中する体制を整えました。

 2013年4月には、「遺伝情報実験センター」の改組により「トランスオミクス医学研究センター」を設置し、多階層のオミクス技術を用いた医学研究の世界拠点を目指しています。2016年4月からは、第2期の共同利用・共同研究拠点「多階層生体防御システム研究拠点」の認定更新を受け、トランスオミクス医学研究センターをコアに国内の3つの共同利用・共同研究拠点(東京医科歯科大学難治疾患研究所「難治疾患共同研究拠点」、徳島大学先端酵素学研究所「酵素学研究拠点」、熊本大学発生医学研究所「発生医学の共同研究拠点」)と協力して「トランスオミクス医学研究拠点ネットワーク形成事業」を展開しています。当研究所は、共同利用・共同研究拠点「多階層生体防御システム研究拠点」として、最先端の研究機器や支援技術(超高速DNAシーケンサー、マイクロアレイ、電子顕微鏡、NMR構造解析、プロテオーム・メタボローム解析、遺伝子改変動物作製サービスなど)を国内外の多くの共同研究者に開放・提供しています。当研究所が取り組んでいる「トランスオミクスアプローチによる革新的医学研究」は、日本学術会議の学術の大型研究計画に関するマスタープラン2014、2017に選定されています。

 2018年4月には、附属施設の「生体多階層システム研究センター」と「感染ネットワーク研究センター」を統合再編して、「システム免疫学統合研究センター」を新設しました。これに伴い、3つの研究部門を分子機能制御学部門(3分野)、細胞機能制御学部門(3分野)、個体機能制御学部門(3分野)、発生工学実験室と技術室を研究推進ユニットとして再編しました。今後も新しい体制でトランスオミクス医学研究に基づく新たな生体防御医学研究を推進して参ります。また、大学院教育においては、医学系学府(医科学専攻修士課程、医学専攻博士課程)とシステム生命科学府(生命医科学専攻 5年一貫制博士課程)の教育と研究指導を担当し、理医連携のコアとして活動しています。

 今後とも活発な研究活動により、生命現象ならびに病理現象を解明し、難治性疾患に対する新規治療法の開発へ貢献することが、生体防御医学研究所教員・学生・スタッフ一同の願いです。なにとぞ、ご支援賜りますよう心よりお願い申し上げます。