全ゲノム配列決定によるICF症候群の新規原因遺伝子の探索および機能解析
1.ヒトゲノム・遺伝子解析研究について

 九州大学では、病気に関係する遺伝子や薬の効き目に関係する遺伝子を見つけ出したり、遺伝子技術を取り入れた病気の検診のための技術開発を行ったりしています。このような診断や治療の改善の試みを一般に「ヒトゲノム・遺伝子解析研究」といいます。その一つとして、九州大学 生体防御医学研究所 エピゲノム制御学分野では、現在ICF症候群の患者様を対象として、全ゲノム配列決定により新規原因遺伝子を探索し、見つけた遺伝子の機能を解析する「ヒトゲノム・遺伝子解析研究」を行っています。

 今回の研究の実施にあたっては、九州大学医系地区部局ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理審査委員会の審査を経て、研究機関の長より許可を受けています。この研究が許可されている期間は、令和7年5月31日までです。

2.研究の目的や意義について

 ICF(immunodeficiency, centromeric instability, facial anomaly)症候群は生まれつき免疫細胞がうまく機能しないために感染症にかかりやすく、幼少期に亡くなられる方が多い遺伝病で、世界中でまだ100例ほどしか報告がありません。私たちはこれまでに患者様とそのご家族の協力のもと、この遺伝病の原因遺伝子を全エクソン配列決定によって見つけるとともに、見つけた遺伝子の機能を解明してきました(Nitta et al., J Hum Genet., 2013; Thijssen et al., Nat Commun., 2015; Unoki et al., J Clin Invest., 2019)。しかしながら、いまだに原因遺伝子が不明な患者様もおられ、全ゲノム配列を決定することでそのような患者様の原因遺伝子を見つけたいと考えております。また患者様のゲノムDNAには、病気の直接の原因ではないかもしれませんが、病気のせいで2次的に起こった異常がある可能性があります。これらの異常を解析することで、どうして患者様が病気になったのかがわかり、病気の症状を緩和したり、進行を遅らせたりすることができるようになる可能性があります。

3.研究の対象者について

 山梨大学もしくはParis Diderot Universityとその関連施設において研究許可日から令和7年5月31日までにICF症候群として診断された患者様と患者様の近縁者で、本研究計画について十分に理解し、本人による同意が可能な方15名を対象にします。

 上記に加え、九州大学 生体防御医学研究所 エピゲノム制御学分野において行われた下記の研究に参加された15名(いずれも山梨大学もしくはParis Diderot Universityとその関連施設でICF症候群と診断され、同意書に署名された方)とその近縁者12名も対象にします。研究への協力を希望されない場合は、山梨大学もしくはParis Diderot Universityまでお知らせください。

4.研究の方法について

この研究を行う際は、カルテより以下の情報を取得します。また、保管されているDNAを用いて、大規模シーケンサーにより全ゲノム配列を解析し、遺伝子の変異など塩基配列の異常を明らかにします(九州大学、東京大学、東北大学)。また保管されている血液細胞を培養して、同定された遺伝子の機能を解析します(九州大学、東京大学、TECHNION Israel Institute of Technology)。
 〔取得する情報〕
  年齢、性別、新規対象者のみ血液検査結果(白血球数、免疫グロブリン量)

5.研究に関する情報公開について

 この研究に参加してくださった方々の個人情報の保護や、この研究の独創性の確保に支障がない範囲で、この研究の研究計画書や研究の方法に関する資料をご覧いただくことができます。資料の閲覧を希望される方は、ご連絡ください。

6.利益相反について

 九州大学では、よりよい医療を社会に提供するために積極的に臨床研究を推進しています。そのための資金は公的資金以外に、企業や財団からの寄付や契約でまかなわれることもあります。医学研究の発展のために企業等との連携は必要不可欠なものとなっており、国や大学も健全な産学連携を推奨しています。
 一方で、産学連携を進めた場合、患者さんの利益と研究者や企業等の利益が相反(利益相反)しているのではないかという疑問が生じる事があります。そのような問題に対して九州大学では「九州大学利益相反マネジメント要項」及び「医系地区部局における臨床研究に係る利益相反マネジメント要項」を定めています。本研究はこれらの要項に基づいて実施されます。
 本研究に関する必要な経費は公的資金である部局等運営費で賄われており、研究遂行にあたって特別な利益相反状態にはありません。
 利益相反についてもっと詳しくお知りになりたい方は、下記の窓口へお問い合わせください。

利益相反マネジメント委員会
(窓口:九州大学ARO次世代医療センター 電話:092−642−5774)

7.研究の実施体制について

 この研究は以下の体制で実施します。

研究実施場所
(分野名等)
九州大学 生体防御医学研究所
エピゲノム制御学分野
研究責任者 九州大学 生体防御医学研究所 エピゲノム制御学分野/准教授 鵜木元香
研究分担者 九州大学 生体防御医学研究所 エピゲノム制御学分野/教授 佐々木 裕之
九州大学 生体防御医学研究所 情報生物学分野/教授 須山 幹太
九州大学 生体防御医学研究所 情報生物学分野/特任助教 吉原 美奈子
九州大学 生体防御医学研究所 情報生物学分野/助教 菊竹 智恵

共同研究施設
及び試料・情報の提供のみ行う施設
施設名 / 研究責任者の職名・氏名 役割
@ 山梨大学大学院総合研究部医学域社会医学講座 / 
准教授 三宅 邦夫
試料・情報の収集とデータ解析
A UMR7216 - Epigenetics and Cell Fate, Paris Diderot University (Paris 7) / Research director (DR2), Group Leader Claire Francastel 試料・情報の収集およびデータ解析
B 東京大学大学院医学系研究科 国際保健学専攻 人類遺伝学分野 / 教授 藤本 明洋 データ解析
C Molecular Medicine Laboratory, Rappaport Faculty of Medicine TECHNION Israel Institute of Technology / Associate Professor Sara Selig 機能解析
D 東京大学定量生命科学研究所 ゲノム再生研究分野 / 教授 小林 武彦、助教 堀 優太郎 機能解析・データ解析
E 東北大学学際科学フロンティア研究所・先端学際基幹研究部 / 助教 大學 保一 データ解析

8.相談窓口について

 この研究に関してご質問や相談等ある場合は、事務局までご連絡ください。

事務局
(相談窓口)
担当者:九州大学 生体防御医学研究所 エピゲノム制御学分野
            准教授 鵜木元香
連絡先:〔TEL〕092-642-6761(内線6761)
            〔FAX〕092-642-6799
メールアドレス:unokimbioreg.kyushu-u.ac.jp
*@の部分は画像で表示しているため、メール送信の際にはご注意下さい。